【中医学の臓腑とは】脾(ひ)って何ですか?脾臓(ひぞう)じゃないの?

【中医学の臓腑とは】脾(ひ)って何ですか?脾臓(ひぞう)じゃないの?

薬膳ライフコーチがレシピ開発中

今日は春分!これから陽気が夏至に向かってどんどん強まっていく時期ですね。 先日も「星読み薬膳ライフ」のブログで「春分図」についてご紹介したばかりですが、社会の気運が高いレベルの学問を目指したい射手座のところからASCアセンダントでスタートするのですね。 そのためか、薬膳の学びについても表面的な浅い学びというよりは、「ナチュラル薬膳生活専門家養成コース」で体系的に勉強して、将来の社会活動に生かしたいというご相談を大人女性の方から頂いています。 こうした天体からの後押しを上手に使って春の新スタートを切ると、未来への夢が好循環で実現していきそうな兆しが出ていますね。 まだコロナオミクロン株の感染の心配は残っていますが、明日から日本政府もコロナまん延防止法を解除するので、一人ひとりの個人はは感染予防に十分注意しつつ、未来計画にそって行動を始めたいものですね。 春分と秋分 ところで昨日は通学にて実施した【前期】薬膳基礎コース「理論レッスン」のひとこまから、生徒さまが考案した冬の季節薬膳のブイヤベースについて「薬膳レシピ開発ディスカッション」を行った様子をお伝えしました。 そういえばレッスンが始まる前に生徒さん達が、「脾(ひ)って何?脾臓でしょ?」とおしゃべりしているのが耳に入ったのですね。 現代医学を習得した医療従事者の生徒さまもいらっしゃるので、現代医学の脾臓の主な働きについてはご説明をお願いしました。 しかし、中医学でいう臓腑の働きは現代医学と同じ呼び方をしていても概念が全く違うので注意が必要です。 こちらの薬膳スクールでは薬膳の専門知識を身に付けて、医・食・癒の仕事現場で生かしたい生徒さまが多いので、現代医学や現代栄養学の知識を既にお持ちの方が多いです。 このため、中医生理学と現代医学で同じ名称の臓器を目にすると、現代医学の知見をそのまま先人の中医学に当てはめてしまいがち。 学習心理学では「負の学習転移」という言葉で知られているのですが、以前学んだ知識が新たな学習に役立つどころか、邪魔をしてしまうことがあります。 ほぼ同じこともあるのですが、脾と脾臓のように全く異なる場合があります。 実は先日薬膳に関するSNSで「中医学でいう腎」に帰経する(働きかける)ある薬膳素材について、「腎機能を高める働きがある。」と書かれているのを見かけました。 中医生理学を習得した人なら、ここでいう「腎機能」が何のことを言っているのか分かることでしょう。 でも中医薬膳学を知らない現代医学や現代栄養学の専門家の方が読んだら、中医学の腎の抽象的な働きのことを、現代生理学の腎そのものだと受け取ってしまう可能性が高いです。 そんな気づきが先日あったばかりなので、この機会に分かりやすく各方面の専門家の方や一般の方にも分かりやすく、中医学と現代医学では人体の臓器に対する認識が違うことをこのブログでお伝えすべきだと感じました。 薬膳の専門家を目指す大人女性に届ける【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】 ですから今回は薬膳の初心者さんというより、中医学に関わるセラピーを始めて学ぶすべて方々が最初に出くわす大きな疑問のひとつ、中医学でいう脾(ひ)と現代医学でいう脾臓の違いについて、簡単にお話ししたいと思います。 自分も最初に薬膳を学んだときに、脾って一体何者?と思ったからからです。 もちろん今は脾が概念的な臓器なのを知っていますので、初心者さんにイメージしやすいようにやさしくお伝えしています。 では、中医学の脾と現代医学の脾臓の違いについて見ていきましょう。

そもそも現代医学でいう脾臓って何?

脾臓は、医の裏側にあるにぎりこぶしほどの赤い器官です。 赤い組織の赤脾髄と、白い組織の白脾髄から成ります。 現代医学の臓腑 赤脾髄は、血流から入ってきた古い赤血球や血小板を処分する働きなどがあります。 白脾髄は、白血球免疫細胞の働きや、増殖などに関与します。

中医学でいう脾(ひ)とは一体何か?

一方、中医学でいう脾(ひ)は概念的な「臓」なので、物質的なモノとしては存在していない臓器です。 しかし薬膳学をはじめ、中医学の考え方をベースにセラピーを行う鍼灸・中薬学・気功学・日本漢方・按摩・推拿の世界では、消化吸収を担う概念的な臓器として捉えられています。 しかもカタチはないのに、お腹のあたりにあると考えられているのです。 初めて聞く人にとっては驚きだと思うのですが、これはインド人がゼロという概念を古代から持っていたのに匹敵する驚きの概念だと思います。 「脾はないのにある。」とは一体どういうことなのでしょうか? 一般の皆さんも「五臓六腑」という言葉をお聞きになったことはあると思うのですが、脾はこのうちの「臓」のひとつなのです。 実は中医生理学の分野では、機能の面から近しい働きを持つ臓と腑は表裏関係と言って一対ずつワンセットで考えられているのですね。 臓の脾は腑の胃とコンビになっており、中医学の一分野である薬膳学でもよくこれらを合わせて「脾胃(ひい)」と呼びます。 皆さんご存じのように胃は大体で良いのですが体幹の真ん中あたりにありますよね。 そして胃は消化吸収の最初の段階で、食べたものをよくこなすという働きを担っています。 中医薬膳学の先人たちは、胃とタッグを組んでいる脾は、胃と協力し合って消化吸収そして氣(生体エネルギー)を生む大切な一翼を担っていると考えてきました。 脾にはカタチがないのにです! でも脾は胃と一緒に働くので、お腹の真ん中あたりにあると考えられてきたのです。 ですから中医学の各方面の専門家たちは脾について「消化吸収をになう臓器」や、「消化器系統」と表現しています。 現代医学では脾臓は血液に関与する臓器であることを先にご紹介しましたが、このように中医学の脾は消化器系統の臓器という認識なので生理学においては全く異なる概念なのがお分かりいただけたでしょうか。 薬膳の初心者の皆さんが学んでいる【前期】薬膳基礎コースの中医生理学では、脾をはじめ内臓くん達が一体どのような相関関係を持って働いているのか、ビジュアルで分かるように擬人化して教えています。 しかし、臓腑の絵を可愛く擬人化して描くときに、脾はカタチがない臓器なのでどのようにお絵かきで表現したらよいものかと迷いました。。。 ちなみに、脾は胃がこなしてドロドロにした飲食物を氣に変換するため、氣を作る製造工場が位置している体の上の方に、ぐい~んと持ち上げる働きも担当しています。 中医学では脾には氣の材料だけでなく、驚いたことに内臓も落っこちないように上に引っ張り上げておく働きがあると考えられています。 そこで、自分の中では脾は上昇しながら飛んでいくスーパーマンのようなイメージがあったので、そのように描くことにしました(笑)。 上昇する脾のイメージ もともとカタチはないけれど、二千年前に中医学の専門書が編纂された昔からずっと、概念としては存在すると考えられて臨床で人々の診察・診断・治療の対象となってきた内臓です。 中医学の先人に敬意を払いつつこのように自由な発想で脾を描かせて頂き、公式テキストやホワイトボードに生徒さまにお示ししながら「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」を社会普及しています。

まとめ【中医学の臓腑とは】脾(ひ)って何ですか?脾臓(ひぞう)じゃないの?

今回は薬膳レッスンが始まる前に、薬膳は初心者の生徒さま達が中医薬膳学で耳にする脾と現代医学の脾臓が同じでしょ・・・と語り合っているのを耳にしたので、その違いを「脾って何ですか?脾臓じゃないの?」というご質問にお応えするカタチでまとめてみました。 現代医学の脾臓は血液に関与する臓器で、古くなって使わなくなった赤血球を壊す働きなどがあります。 一方、中医学で言う脾は概念的な臓器でカタチはないものの、体の真ん中に位置して胃とともに消化吸収を担う臓器だと考えられています。
薬膳は中医学に基づく食事療法なので、健康増進・不調の予防ケアを実際に行うには、中医学の専門知識がある程度必要です。
このことから将来薬膳の専門家を目指す大人女性の皆さんや、すでに薬膳の専門家として活躍しているけれど、中医学の脾と現代医学の脾臓の違いがはっきり分かっていなかった方がいらしたら、今回のブログがお役に立てば幸いです。
須崎桂子けいてぃー♪ 参考文献: 須崎桂子著『ナチュラル薬膳生活入門編』 佐藤昭夫、佐伯由香編集『人体の構造と機能』]]>