【薬膳生活お役立ち情報】薬剤師さんの参考本に学ぶ「生活習慣病の基準値の落とし穴」

【薬膳生活お役立ち情報】薬剤師さんの参考本に学ぶ「生活習慣病の基準値の落とし穴」

2022年9月6日

医療や食やセラピーの現場で、自分や家族の不調に何を食べたらいいのか迷う患者さまやクライアントさまに、やさしい家庭薬膳レシピを提案できる人材を育成して14年になります。 きっかけは、肺がんの放射線の通院治療で体内の呼吸器に火傷を負った父に、実家で炎症を癒す料理を考えられなかった会社員当時の後悔でした。 父が他界した後この苦い経験を糧に薬膳を学び、勤めを辞して2008年に《薬膳の専門家》を養成する薬膳スクールを開校して現在に至ります。 《薬膳の専門家》を育てる【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】 薬剤師の方々からお話しを伺うと、高齢の患者さんや精神疾患を抱える患者さんを長い間に何種類ものクスリ漬けにしがちな現代の医療に疑問を感じている方が少なくありません。 そう思っていたら今年、宇田川久美子さんが2013年に出版された書籍『薬剤師はクスリを飲まない あなたの病気が治らない本当の理由』と出会いました。『薬剤師はクスリを飲まない』という、かなり過激なメインタイトルに最初はちょっとビックリしました。 でも、現代生理学を熟知して医薬品が心や体に与える影響を分かっている医療従事者には当たり前のことが、一般の人にも伝わるようにようにやさしく書かれています。 日本の国民皆保険医療制度は素晴らしい反面、化学合成薬を安く処方できるので誰もが多くの種類の薬を手に入れやすい超高齢化社会です。 こうした薬は直接的に神経や臓器の働きを制御するのですぐに効き目が現れます。 その反面、生体にとっては異物なので、服用している間は体の中で解毒するプロセスで精神や臓器に負担をかけ続けます。 著者がこうした状況に警鐘を鳴らし改善策を提案するために書かれたのがこの本です。 もちろんひと口に医薬品と言っても疾病の性質によっては、どうしても服用し続けなければ命に関わる病気があるのも事実です。 しかしそうではない場合、または薬を減らせそうな場合、わたくし達には一体どんなセルフケアができるでしょう。 薬膳ライフコーチが社会に普及している「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」による食のアプローチもそのひとつです。 この本にも薬だけに頼らないで健やかに長く生きるメリットや、健康をバランスよく守るのに役立つ運動法や呼吸法など、具体例が詰まっています。 せっかくなので薬膳ライフコーチはこちらの著書を参照しつつ統合医療の立場から、《薬膳の専門家》を目指す人たちに大切なポイントをピックアップしてご紹介しています。 統合医療は、伝統医学と現代医学のメリットをどちらもバランスよく取り入れて、心と体の健康をホリスティック(総体的)に守ろうと試みる医学的なアプローチです。 間もなく60歳を迎える自分も先月の人間ドックのHbA1cの数値を見て思うところがあったので、今回のテーマは「【薬膳生活お役立ち情報】薬剤師さんの参考本に学ぶ「生活習慣病の基準値の落とし穴」」です。

生活習慣病など「基準値」「正常値」は気になるけれど人によって違うはず

薬局の白衣を脱ぎ捨てた薬剤師の著者によると、人はそれぞれ薬に対する感受性が違うように、体重、身長、腹囲、血圧、コレステロール値、血糖値なども違うはずと指摘しています。 このくだりを読んで、中医学がみなもとである薬膳の考え方と同じなのにはっとしました。 中医学は人は一人ひとり違うことを前提にしたテイラーメイドの方法で病気を予防ケアする医学だからです。 もちろん、健康を守るために自分の健康診断の数値が「基準値」と比べてどのレベルにあるのか把握するのは大切です。 超高齢化が進む日本社会では、年齢が進むにつれて変わっていく自分自身の体を知る必要もあるでしょう。 薬膳ライフコーチも無自覚の病気や加齢の影響を知り予防と現状認識のため毎年定期的に検診を受けています。 昨年は無自覚のうちに耳が遠くなってきているのを検査で知りショックでしたが現実として受け止めて暮らしています。 薬膳では耳は中医内科学で言う「腎」に関わりが深い器官なので、腎を滋養する薬膳素材を心がけて摂るようになりました。 自分は若いつもりでも年齢を重ねるうちに体の様々な機能が衰えてくるのは自然の摂理。 命のサイクルをしっかり理解して大宇宙=大自然の営みに合わせ今を生きるのが健康の秘訣です。 この本では生活習慣病のひとつ「高血圧」を例に、メタボ診断の基準値の捉え方の心理的プレッシャーについての言及。 いわゆるメタボ診断(特定健康診査)は2008年から厚生労働省が始めた生活習慣病予防のため、一律で「基準値」「正常値」を掲げた健診・保健指導です。 メタボ診断では、年齢に関わらず最高血圧(収縮期血圧)は130以下。 しかし、著者が薬剤師になった頃、収縮期の基準値は年齢プラス90という年齢に比例して上がる大まかな考え方だったそうです。

血圧検査と降圧剤

例えば、40歳の人は40+90=130、60歳の人であれば60+90=150といったふうに。 高齢になると体の変化に伴い血流を上げる必要が出てくるから、それに比例して血圧が上がっても問題なしとされてきたそうなのですね。 2022年の現在はそうではなく、どの年代の人でも130以上あると「血圧が高い」と言われるようになりました。 2004年のデータですが疾病による死亡原因のうち生活習慣病による合併症で亡くなる方が6割という現実。 これに対応して、国民を守ろうと政府が主導して始めたメタボ検診の動機は素晴らしいことです。 薬膳ライフコーチは低血圧の体質なので健康な人の血圧の考え方が、政府の方針でここまでガラリと変わったこの節目の年をあまり覚えていません。 奇しくも会社員を辞めて薬膳スクールを開業した年のことでした。 以来、年齢に関わらず血圧の基準値をオーバーしていると言われた人は、どこにも不調がないのに急に病人意識が芽生え「薬を飲んで数値を下げなければ」という強迫観念にかられるようになったと著者は分析。

医薬品と植物の葉

「基準値」「正常値」が必要以上に多くの人に病人のレッテルを貼っているような気がすると指摘しています。 それまで体に問題なく過ごしていた健常者が解毒の臓器に負担をかける医薬品を常用するようになり、かえって体調が悪化しているとしたら・・・ 薬膳ライフコーチは医療従事者ではないので、著者ほど踏み込んで分析提言するのは容易ではありません。 その一方で薬膳の専門家として現代医学的なメディカルハーブの知識と経験も併せ持つので、一人ひとりの体調や体質に合わせた薬膳レシピ開発を独自カリキュラム「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」で指導してきました。 食生活を変えることで速攻劇的に血圧や血糖値にの数値に変化を及ぼすのは容易ではありません。 それでも、生活習慣病を予防ケアする暮らし方のメカニズムには先人の知恵や現代栄養学のエッセンスがぎっしり。 ですから自分は専門分野の範囲で必要以上に薬を摂らないライフスタイルを提言していこうと思いを新たにしました。

薬膳ライフコーチもHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が糖尿病の検査必要値に

こう考えていた矢先、先月に人間ドックを受けたら、過去1~2ヶ月の血糖値の状態を調べるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が糖尿病の検査必要値の6.0%に上がっていました。 一方食後血糖値は正常値の範囲内。。。 50歳代に入り年齢を重ねるにつれて、5%台の後半になっていたので糖代謝が落ちているのだろうとは思っていました。 しかし年齢や体質によるものかもしれませんが、薬膳の専門家が糖尿病になるわけにはいきません。うわー。 プレッシャーを感じて、即座に「基準値」「正常値」の精神的な落とし穴に自分がハマってしまいました。

落とし穴

生活習慣病の「基準値」「正常値」の落とし穴のデメリットをご紹介しているのに、人間はこのありさま。 自らを律するのは大切ですね(汗)。 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)というのは、血液中の赤血球に代謝されないで残った頭が赤血球にくっついた「糖化ヘモグロビン」が血中に何%あるか示す数値のこと。

血管と赤血球

ヘモグロビンは赤血球内のたんぱく質で、全身の隅々まで酸素を送る働きをしています。 赤血球は血液中で1~2ヶ月使われた後で肝臓・脾臓で処理され新たに作られるため、過去1~2ヶ月の血糖値の状態を把握できるのです。 薬膳ライフコーチはここでパニックになっては元も子もないので、健康診断の後はいつものとおり予防と現状認識。 告白するとこの夏の猛暑の時期、お昼に暑いのでかなり連続して農協の野菜の地産地消のジェラートを食べていました。 画像はイメージなので異なりますが、そら豆や梅干しやほうじ茶など珍しい種類もあってからダブルを選んでいました。

ジェラート

薬膳の考え方ではお腹を冷やすアイスクリームの類は本来はタブー。 消化吸収を担う臓腑の働きを鈍らせるからです。それなのに分かっていながら猛暑はやってしまいました。。。 普段の食事は三大栄養素やビタミンミネラルのバランスの良い季節薬膳を食べているし、野菜たっぷりが好き。

薬膳ライフコーチの食事20220906

甘いものを食事と食事の間にほとんど間食することはありません。 BMIも20なので肥満ではありません。 だから理由は猛暑の夏にエンジョイしたジェラートかもしれないと考えたのです。 もうひとつ思い当たるのは運動不足。 先々月に家族からコロナオミクロンに家庭内感染したのでお気に入りのエアロビクスに行けませんでした。 夏休みで気功と太極拳のお稽古は先月お休みだったのでいつもより練習量が減っていました。 糖質が多く冷やすお菓子はたまに楽しむ程度に控えて、しっかり運動を以前のように戻そうと反省。 60歳代に入っても「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」を社会に普及している身ですから、薬膳美人の鑑でありたいと思います。 ところで人間ドックを受けたクリニックでは速報値の数値を見ながら、すぐにドクターや看護師さんが解説や注意を教えてくださいます。 薬膳の専門家なのに面目ないと告白して看護師さんから現代栄養学の知見からしっかり習って、女子栄養大学栄養クリニック監修の分かりやすい糖尿病のタイプ別食事改善のパンフレットも頂きました。 精神的なプレッシャーのガス抜きに、自分のHbA1cのパーセンテージが上がって焦っている話を知人の管理栄養士や薬剤師の生徒さまに話してみたのですね。 すると管理栄養士の方からは、HbA1cの数値は生活を改善すればすぐに下がりますよ。 薬剤師の方からは6%って薬を飲むほど高くないですよと言って安心させてくださいました。 薬剤師の著者も「生活習慣病は薬では治せない」と明言されています。 先天性の病気や感染症ならいざ知らず、生活習慣の乱れや加齢が原因となっている生活習慣病は原因が自分自身の暮らし方。 自覚症状がないまま進行していくので、薬を飲むより合併症が現れる前に生活習慣の見直しを優先したほうがよいですね。 こんな反面教師になってしまいましたが、この経験で自分も実践しながらさらによい生活習慣病予防ケアの薬膳レッスンをデザインできそうです。

まとめ【薬膳生活お役立ち情報】薬剤師さんの参考本に学ぶ「生活習慣病の基準値の落とし穴」

健康診断や人間ドックで生活習慣病の予防ケアに使われている「基準値」「正常値」は、高血圧症や糖尿病などから将来引き起こされる合併症のリスクを知るのに必要なガイドラインです。 しかし、人は体質や年齢や生活習慣によってそれぞれ異なるので、一律にガイドラインの数値を当てはめるのが必ずしも正しいとは限りません。 今回は超高齢化社会の高齢者や生活習慣を見直さない人が、生活習慣病の薬に必要以上に頼り過ぎている現状について検証。 薬剤師の宇田川久美子さんのご著書『薬剤師は薬を飲まない~あなたの病気が治らない本当の理由』をひも解きながら、基準値に振り回されず、必要以上の薬を飲む前に生活を見直す必要性を考えてみました。 その著書のなかから高血圧症の基準値がメタボ検診の導入により年齢に関わらず一律に示されているため、降圧剤を日常的に服用しなければならない高齢者が増えている現状を紹介。 人は「基準値」「正常値」から外れると、正常範囲内に薬を服用して調整しなくてはいけないという強迫観念という落とし穴に陥りやすい。 しかし、医薬品は解毒の臓器に負担をかけるので、本来は常用し過ぎるのはかえって健康に良くないことについても言及。 さらに、薬膳ライフコーチ自身が血糖値を検査するHbA1cの基準値が糖尿病の検査を要する%にまで高まったため、自分も先月即座に同様の心理的な不安に陥った話をシェアしました。 しかしその後で看護師さんから頂いた栄養指導の話も交えながら、冷静にHbA1cが高くなった理由を自己分析。 薬膳の専門家として糖尿病など生活習慣病の予防ケアについて、基準値に振り回されて薬を服用するのではなく、自分の経験や改善のプロセスを糧に社会に提言して行こうと考えていることを分かち合いました。 薬膳ライフコーチと言えども人間なので、自分の健康管理が完璧でないこともありますが、こうしたお話もすべてひっくるめて、将来薬膳の専門家を目指している皆さまにこうした経験談がお役に立てば幸いです。 須崎桂子けいてぃー♪ 参考文献:宇田川久美子著 薬剤師は薬を飲まない~あなたの病気が治らない本当の理由