昨年末は毎年恒例、家族総出で餅つきをして大きなのし餅をそれぞれが家に持ち帰りました。
その際、親戚のおじさまがなぜか大量にみかんが入った昔懐かしい「箱みかん」をどーんとくださったのですね。
手作りのちいさなお供え餅にみかんをのせてみたりして、あたまでっかちなお供えを飾ったり、いろいろやってみました。
それでも今どきは家族構成が少ないので一度に大量のみかんを買うことはないので、一瞬途方にくれました。
もし無農薬の温州みかんなら、果皮をかわかして薬膳食材のみかんピール、生薬でいえば「陳皮(ちんぴ)」にしたかったところです。
冬になるといつもはみかんピールづくりに自然派食材店から無農薬または減農薬のみかんを買って、自家製みかんピールを作っています。
だから、頂いたみかんの皮には申し訳ありませんがサヨウナラして、果実はどんどん家庭薬膳に使うことにしました。
薬膳のプロを目指す大人女性にお届けしている【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】。
こんなときに役立つのは「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」の知恵。
みかんはそのまま食べたり、ジュースやスイーツに使ったりするだけではありません。
そこで今日はみかんを使って作る「食べる氣功薬膳」という発想のお話しです。
「食べる氣功薬膳」初心者さんが最初に自分で考えて開発する基本の薬膳処方
「食べる氣功薬膳」は「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」を始めて学ぶ初心者さんが一番最初に薬膳レシピ開発の課題で取り組む基本の薬膳処方。
気(生体エネルギー)を食べ物から補給したら、その気を全身に余すところなく巡らせて体の隅々にまで気を巡らす働きのある薬膳食材で届ける方法です。
それは、ナチュラル薬膳生活カレッジ柏本校サロンが考えた「
基本の薬膳レシピ開発」発想術です。
気を巡らす薬膳食材には柑橘系の果物が多く、漢方薬に入っている生薬にも使われています。
例えば、先ほど触れた陳皮(ちんぴ)もそのひとつなのですが、日本薬局方では「生薬」に分類されています。
余談ですが薬機法に鑑みると陳皮は生薬なので効果効能を謳いながら宣伝販売するのはNGです。
ですが「みかん」と言えばスーパーで買える普通の食材ですから、薬膳づくりにその名前のままで使えば薬機法上は全く問題ありません。
こうした気を巡らす柑橘類のような薬膳素材に、気を補給するものを組み合わせると「食べる氣功薬膳」は作れます。
気を補給する代表的な薬膳食材は、穀類なら毎日食べている粳米(うるちまい)のご飯、お肉なら鶏肉、野菜ならカリフラワーなどです。
たとえば昨日ご紹介したみかん薬膳「水菜と塩麹鶏のみかんサラダ」はおせちの箸休めでしたが、夫の帰省先の義父には大好評でした。
みかんで気を巡らせて、鶏肉で気を補給するので、このレシピも「
食べる氣功薬膳」になっています。
でも帰省中に作ったこの薬膳処方で目的としたのは、現代医学の生理学の考え方を生かした「
消化促進の薬膳」。
中医学には「異病同治(いびょうどうち)」という考え方があります。
違う病気に対して同じ治療法があるという意味です。
ここでは病気のケアではなく、健康を管理して健やかに過ごすための食べ方の話にはなりますが、薬膳にも同じ考え方が根底に流れています。
同じ治療法、ここでは治療法になぞらえて「薬膳」の処方のことを意味します。
それを予防したい病気や不調、ここではまだ体調不良は起こしていないけれど、
消化不良を予防したい、あるいは気が全身に行きわたらなくて
疲労しないようにしたい。
病気予防の薬膳は起こるかもしれない不調を想定して処方しますが、おなじ薬膳レシピが複数の目的に使える場合があるというわけです。
消化不良の予防の薬膳に関しては、おせちの時期には年末の年越し蕎麦や、お雑煮のお餅や、日本酒など穀類由来の炭水化物をたくさん食べたり飲んだりするから考えた処方です。
みかんに含まれるビタミンCは、炭水化物を分解してエネルギーを生むのに必須の五大栄養素のひとつ。
五大栄養素といえば、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つです。
わたくしたち人間の体には「
クエン酸回路」という生理機能が備わっていて、ビタミンCや植物酸などないと、食べた炭水化物から効率よく分解してATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを生み出せません。
だから消化器に負担をかけそうな炭水化物をたくさん食べるときには、ビタミンCの多い野菜や果物を一緒にとるとスッキリするのです。
おせちの箸休めに義父のお台所にあったみかんを拝借して消化促進の薬膳を作ったのはこうした理由からでした。
こんな風にナチュラル薬膳生活では普段の暮らしの中で、中医学だけでなく現代生理学や栄養学の知見も活用して、薬膳レシピを開発を指導しています。
食べる氣功薬膳「みかんと鶏モモ肉のソテー」という発想
一方、帰省から帰宅した後で頂いた箱みかんを大量消費するのにこのところ作っているのが、柑橘類の気を巡らす働きを生かした「食べる氣功薬膳」です。
お雑煮に使おうかと沢山買った鶏もも肉も自宅の冷蔵庫にあったので、帰省先で作ったのと同じ組み合わせ、気を補給する鶏肉と気を巡らすみかんをソテーして食べる氣功薬膳を作りました。
薬膳を学ぶ前はみかんを加熱調理して食べるという発想はなかったのですが、寒い真冬の時期にみかんをそのまま食べると体が冷えてきてしまいます。
薬膳レシピ開発では薬膳素材選びはもちろん、調理法にも気を遣って食事療法を行います。
それで美味しければいいわけで、今回は思い切ってみかんも鶏肉と一緒にソテーしてしまいました。
みかんに含まれるビタミンCや加熱に弱くソテーするとかなり失われてしまいますが、使うみかんの量は箱入りなのでどっさり。
だから、今回はみかんを腐らせてしまうわけにはいかないので使う消費スピードのほうを重視しました。
ところで【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】では難しい中医学の薬膳処方の流れを、魔法の3ステップ
①不調の症状➡②タイプ分け➡③薬膳の対策をやさしく解説しています。
この流れでやさしく説明すると、基本の食べる氣功薬膳は、
①疲労感が抜けない不調➡②何らかの原因で体内の気が足りないタイプの不調➡③気を補給して全身に巡らす薬膳の対策
こうした薬膳の処方になっています。
このようにナチュラル薬膳生活カレッジでは、完成形の薬膳の料理がなぜ、特定の薬膳食材と調理法を使って作られたのか、その理由が手に取るように分かるように工夫して生徒さまにもお伝えしているのですね。
なぜなら薬膳は普通のお料理ではなく、
中医学の食事療法だからです。
先ほど例に挙げたとおり薬膳の食事療法の特徴のひとつは、
薬膳レシピの目的をほかの症状にも応用できる場合が多いことです。
この薬膳レシピは食べる氣功薬膳として開発しましたが、消化不良の予防にもよいですし、柑橘系の香りには心を癒す心理作用も期待できるので心を癒す薬膳にも応用が利きます。
食べる氣功薬膳「みかんと鶏もも肉のソテー」レシピ
【材料】2人分
A:
鶏もも肉 1枚
ごはんで作る甘塩麹 小2
オリーブオイル 大1
生姜 10g
小松菜 1/2わ
みかん 1/2個
【作り方】
①鶏もも肉を食べやすい大きさに切り、塩麹をもみ込んで15分マリネする。
②生姜を千切りにする。小松菜を3cmの小口切りにする。みかんの皮を剥いて輪切りにする。
③フライパンにオリーブオイルと生姜の千切りを入れて火をつける。
④生姜がしんなりしたら①を中火で焼いて余計な脂はペーパーで取りながら火を通す。
⑤小松菜とみかんを加えてさっと加熱したら火を止める。
⑥器に盛りつけて供する。
【補足ポイント】
①胃腸に負担をかけたくない場合は、鶏皮から出た脂はキッチンペーパーで除きます。
②「ごはんで作る甘塩麹」のレシピ、『
薬膳生活レシピ開発BOOK Vol.1 夏 季節薬膳』27~33ページをご参照ください。
まとめ【薬膳レシピ開発】箱みかんの大量消費に鶏肉とソテーで食べる氣功薬膳
今回は、薬膳ライフコーチが年末に親戚からもらった大量みかんを使って作った「みかんと鶏モモ肉のソテー」を例に挙げて、食べる氣功薬膳の考え方をご紹介しました。
そして、同じ食べる氣功薬膳のレシピが、消化促進の薬膳や、心を癒す薬膳にも応用が利く場合があることやその理由も中医学の見地から併せて解説しました。
そして、薬膳ライフコーチが実際に自宅のキッチンで作った簡単な食べる氣功薬膳の調理例「みかんと鶏もも肉のソテー」のレシピと補足ポイントもご案内しています。
このブログ記事を通じて薬膳レシピ開発力をとても大切にしている「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」の理念が、薬膳を仕事に生かして社会に貢献したい大人女性の皆さまのお役に立てばとても嬉しく思います。
参考文献:
須崎桂子著『
薬膳生活レシピ開発BOOK Vol.1 夏 季節薬膳』『ナチュラル薬膳生活入門編』『ナチュラル薬膳生活応用編』
五明紀春監修『食材健康大事典』]]>