【薬膳レシピ開発】チキンスープで気づいた「酵母」ではない「酵母エキス」の真実

【薬膳レシピ開発】チキンスープで気づいた「酵母」ではない「酵母エキス」の真実

2022年5月25日

医療や食やセラピーの現場で、自分や家族の不調に何を食べたらいいのか迷う患者さまやクライアントさまに、やさしい家庭薬膳レシピを提案できる人材を育成して14年になります。 きっかけは、肺がんの放射線の通院治療で体内の呼吸器に火傷を負った父に、実家で炎症を癒す料理を考えられなかった会社員当時の後悔でした。 父が他界した後この苦い経験を糧に薬膳を学び、勤めを辞して2008年に《薬膳の専門家》を養成する薬膳スクールを開校して現在に至ります。 《薬膳の専門家》を育てる【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】

今日は【前期】薬膳基礎コース(上級)の「薬膳レシピ開発」調理実習レッスンでした。

テーマは美肌の薬膳にも応用が利く、秋の季節薬膳レシピ開発。

本来は梨や無花果など秋の旬の果物を活用するのですが、初夏のシーズンとぶつかってしまったので、通年で手に入るキウイフルーツや羅漢果(らかんか)で代用しました。

秋の季節薬膳調理例20220525

昨日はこの調理例の薬膳粥に使うチキンスープなど、調理実習レッスンの薬膳素材を買い出しに行ったのですね。

「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」に使う食材や調味料はなるべく人工化学添加物を使っていないものを選ぶようにしています。

本来はレッスンで使うチキンスープも手作りの薬膳チキンブイヨンをそろえるのがベター。

しかしながら現在は書籍の執筆中で出版間際の状態なので、タイムマネジメント命。

生徒の多くも介護や子育てや自営業や勉強でご多忙の方が多いです。

薬膳生活では時間的・経済的・精神的にストレスにならない程度に、なるべくオーガニックや国産の地場野菜や人工化学添加物の入っていない加工食品を選ぶことでヘルシーなライフスタイルを目指しています。

こうしたストレスフリーのなるべく安心安全な薬膳素材となる食材や加工食品のことを、ナチュラル薬膳生活では、「自然派食材」と呼んでいます。

上質な市販のチキンスープや出汁ももともと、時間がない場合や、簡単に家庭薬膳を作るのに役立つ自然派食材のひとつとして、日本スープさんの上質な丸鶏だしも愛用してきました。

昨日も柏本校サロンの近くの成城石井さんで購入したのですが、なぜか今頃「酵母エキス」入りの製品なのに気づいて「汗」。

そこで今回は、「【薬膳レシピ開発】チキンスープで気づいた「酵母」ではない「酵母エキス」の真実」のお話しです。 急に不安になって調べたら「酵母」と「酵母エキス」が別物なのに、今頃気づいた次第です(反省)。 「酵母エキス」の真実は、タンパク加水分解物と同じ作られ方の化学合成品・・・ 丸鶏を一般の消費者の皆さんが使いやすく加工販売して下さっている日本スープさんをせめているわけではありません。 ただ今回よく調べて「酵母エキス」が入っていないバージョンがあることが分かり、もっと早く知りたかったです。 もともとのチキンスープ自体は受講生の生徒さまや会員さま、書籍を通じて一般の方にもご紹介してきたよい薬膳素材となる加工食品。 「酵母エキス」は法的に食品であるため添加しても、「化学調味料不使用」といった標記が許されている化学的に合成された添加物です。 無添加表示の加工食品に「酵母エキス」が含まれているプロダクトがかなり多いことも改めて知りました。 日本スープさんでも「酵母エキス」など添加物なしのバージョン「丸鶏だしデラックス」を販売なさっています。

「酵母」と「酵母エキス」は別物

「酵母」は、菌類(カビやキノコの仲間)に属する単細胞の真核生物です。 実はわたくし達人間を含む動植物も真核生物。 細胞は特定の物質が出入りできる二重構造の膜で覆われていて、遺伝子情報のDNAはこの中に納まっています。 哺乳類の脊椎動物に進化したわたくし達人間は、こうした細胞が集まって複雑な構造の体の中に心と魂を宿して生命活動を営んでいるわけです。 話を酵母に戻します。 酵母はたった2日間の短い命の生物で、出芽するとアルコール発酵を行ってお酒を造ったり、天然酵母パンを膨らませる発酵にも使われています。

パン酵母

日本人が大好きな発酵食品 一方、「酵母エキス」は、工業的に大量生産された発酵プロダクトで使い終わった酵母のカスに残ったたんぱく質のうまみ成分を抽出するために、塩酸などを使って化学的に作られた合成品。 その他にも何らかの工程を経て作られた人工的な「うまみ成分」だったのです。 ゆえに酵母と酵母エキスは別物。 酵母というと体によさそうなイメージがありますし、自分も酵母を使った天然素材なのかとこれまであまり気に留めていなかったのですね(汗)。 食品表示法では化学的に精製されていないため、「食品」に分類されています。 表示の義務はありますから、プロダクトの製造に使用している場合は、「酵母エキス」と商品パッケージの裏側の原材料の部分に表示されています。

原材料に酵母エキス

それでも酵母エキスは食品だから、(化学調味料)『無添加』と謳うのは合法。 食の安全や長寿社会の健康食への関心の高まりとともに、こうした『無添加』加工食品がたくさん市場に出回るようになり、販売されているのが現状なのをやっと理解できました。 2013年に出版した、現【前期】薬膳基礎コースの公式テキスト『ナチュラル薬膳生活入門編』を出版するに際して、食品添加物についてリサーチしてこの本の中にも、注意を喚起する「自然派食材」の章を立てています。 阿部司さんが書かれた『食品の裏側』(東洋経済新報社)などを参考文献にしっかり調べたつもりが、「酵母エキス」については見落としていたのですね。 昨日ネットで改めて行ったリサーチでは、今年1月15日に東洋経済新報社に阿部司さんが書かれた「酵母エキス」にも触れているタイムリーな記事を見つけました。 末尾に参考文献として記載していますので、薬膳の専門家として、または未来の薬膳の専門家として、薬膳活動に際してご興味がございましたらどうぞご参照ください。 余談ですが、自宅の冷蔵庫に入っている「化学調味料不使用」とラベルに書かれたお気に入りの「ごまみそだれ」の原材料を念のためチェックしたら・・・「酵母エキス」が入っていました。 薬膳ライフコーチなのに・・・、またショック。 しかしですね、だからと言って、その商品の中に使われている上質な材料たちには敬意を払っていますから、いきなり捨ててしまうことはしません。 でももったいないと思うのです。せっかく昆布や鰹節をちゃんと使っているのに。 とにかく、これからは「酵母エキス」が何なのか実は自然派食材ではないのが分かったので、注意して薬膳素材にふさわしい加工食品を選ぼうと思った次第です。 これは食品である!?添加物について遅ればせながら、薬膳の専門家のひとりである自分が得た、大切な気付きでした。 「酵母エキス」の真実を食品添加物に気を付けている皆さまも万が一ご存じでなければ、お知らせしようとこのブログをしたためています。 とは言え朗報があります。 日本スープさんの商品ラインナップをよく見たら、丸鶏のチキンスープを販売している日本スープさんからは「酵母エキス」が含まれていないバージョンの商品がリリースされているのです。 それは、「丸鶏だしデラックス」。

丸鶏だしデラックス

この黄色いパッケージを小売店で市販されているのを、少なくとも柏本校サロンの近隣のスーパーでは自分は観たことがありません。 大手のネットショッピングモールで、まとめ買いの販売形態をとっているのですね。 これまで使っていたピンクのパッケージの酵母エキス入り「丸鶏だし」は、お店で買えるので重宝していました。 「丸鶏だしデラックス」も必要な時に1袋ずつ買いたいのでお店に置いてくだされば本当は助かります。 しかしそう言ってもいられないので、早速ネットショップで5袋まとめ買いで「丸鶏だしデラックス」を今日注文しました。 そんなこんなで、「丸鶏だし」と「丸鶏だしデラックス」の違いに気づかなかったのですが、これからはチキンブイヨンを摂る時間をやむなく節約したい場合は、後者を使おうと決めました。

実践味比べ!手作り薬膳チキンブイヨン・酵母エキス入り丸鶏だし・本当の無添加チキンコンソメ

昨日は酵母エキスの真実を知ってショックを受けたものの、今日の薬膳レッスンでは今回の学びでピンチをチャンスに転換することにしました。 今日の生徒さまは食品添加物を気にしてピリピリする神経質なタイプの方ではないのですが、来月、あと2週間で3人目のお産を控えた妊婦さんです。 この機会に自然のチキンスープと添加物が加わったものの違いを、今日の薬膳レッスンでは一緒に舌で確認してみるレッスン内容を追加することにしました。 冒頭でお話ししたとおり今は書籍の出版間際で時間がタイト。 しかし『薬膳生活レシピ開発BOOK Vol2. 秋 季節薬膳』にも収載しているわたくしの薬膳スープストックのひとつ、「薬膳チキンブイヨン」に使う鶏手羽先を昨日改めて買って来て、急遽夜中に仕込みました。

薬膳チキンブイヨン

買ってしまった酵母入り丸鶏だしサロン教室にスタンバイ。 生徒さまには事情を説明して薬膳レシピ調理例のご試食タイムに、人工の旨味を追加した添加物のあるなしで舌が味をどう感じるのかを比較するワークショップをしました。 サロン教室には、薬膳チキンブイヨンと酵母エキス入り丸鶏だしのほか、「化学調味料・タンパク加水分解物・酵母エキス」不使用の濃縮塩分入りチキンコンソメ(ここでは便宜上、「無添加チキンコンソメ」といいます)があったので、3つを比較することに。 このチキンコンソメは、小さなお子さんの食事にとても気を遣って気を付けている別の生徒さまが使っている安心安全な自然派食材のプロダクトです。 本当はもっと他にも有名な大手メーカーのうまみ調味料も比べるために準備したほうがよかったのでしょうが、急にこのピンチに際して考えた企画のため、今回はこの3つだけでスープの現役比べをしました。

酵母エキスありなしチキンスープ味の比較

左から、薬膳チキンブイヨン、酵母エキス入り丸鶏だし、無添加チキンコンソメ。 まず最初に酵母エキス入り丸鶏だしを飲んでみました。最初に鶏らしい味がするのですが、さらっと消えて、その後、強い旨味が出てきたのですが、ずーっと舌の上に残っている感じ。 でも、自分が苦手な化学調味料のビリビリして顔がのぼせてくるあの味とは違います。 考えてみたら今まで酵母エキス入り丸鶏だしを原液で舐めたことがなかったから、こうした舌に残る特徴には気づいていませんでした。 不自然な味は好きではないから気づくはずだと思っていたのに、お粥やスープなどに混ぜてしまうと分からない自分の舌の感じ方の能力の限界に気づいたのでした。 次に口にしたのは薬膳チキンブイヨン。もともと美味しいから自分で作って薬膳作りに生かしてきた基本の配合の鶏だしです。 今回準備したものには、鶏手羽先、水、生姜、長葱のみ使いました。 味わうと口の中全体に柔らかな旨味が広がり、舌の上からはすうっと喉からお腹へ旨みの味はやんわりと消えていきました。 自分でとった薬膳チキンブイヨンがこんなにおいしいなんて! 酵母エキスの味を確認した後だからか、自家製ブイヨンのやさしい味わいの本質が心と体に沁み入る感覚でしたね。 自分自身で添加物あるなしの鶏だしの味の違いがこんなにはっきりと分かりそれは嬉しい驚きでした。 最後に無添加チキンコンソメを口にしたのですが、わ、しょっぱい!!! 当たり前ですね。濃縮タイプで薄めて使うように指示が書いてありました。 それでお湯で薄めて飲むと言うよりちょっとなめてみたのですが、添加物不使用ですが野菜パウダーや塩分がずいぶん入っているので、薄めてからもかなり味が濃いと感じました。 酵母エキス入りの丸鶏だしのようないつまでも舌の上に旨みが残る不自然な味はしなかったです。 本題からは外れますが、塩分を加えたコンソメ加工食品はずいぶんしょっぱいので、また別な意味で塩分の摂り過ぎによる高血圧など、生活習慣病の予防ケアには向かないと感じました。 自分で一日にどのくらい塩分を摂取したか把握しにくいですし、舌が塩分の濃い味付けに慣れてしまうと、それはそれでまた味覚を正常に保つ妨げになるかもしれないからです。 こうして今日は妊娠中の生徒さまとこうした添加物あるなしで舌が感じる違いなど、大きな気付きを話し合い、薬膳レシピ例の試食や、薬膳調理の理論をご説明してちょっとスペシャルとなりました。 生徒さまはそもそも酵母エキスといううま味成分のことをご存じではなかったです。 ですから、これから長く続く子育てに際してストレスにならない程度に今日お伝えしたうま味調味料のことを知って、産後のご自身の体力の回復、薬膳の専門家として仕事を始める夢、お子さん達の健やかなご成長、ご主人さまの生活習慣病の予防とケアなどに生かしていただければ幸いです。 薬膳ライフコーチ自身もまだまだ勉強すべきことが沢山あると認識を新たにしました。

まとめ【薬膳レシピ開発】チキンスープで気づいた「酵母」ではない「酵母エキス」の真実

今回は薬膳ライフコーチが「酵母」と「酵母エキス」の違いに気づかず、酵母エキス入りの丸鶏だしを使ってしまっていたことに関連して、酵母エキスとは何か、今後の改善策について紹介しました。 酵母はアルコール発酵などに使われる生き物ですが、その廃棄物から化学的に合成されている酵母エキスは別物であることを解説。 酵母エキスは法的には食品に分類されているうまみ成分であるため、これを含む多くのプロダクトが「無添加」や「化学調味料不使用」と銘打って販売されているのが現状。 自分もそれに気づかずに酵母エキスの入った加工食品を使って、無添加の自然派食材として生徒さまや一般の皆さまにご紹介してしまっていたのに気づきました。 だからと言って急に目くじらを立てたりはせず、こうした真実を知って、自然派食材を見極める目を養い気を付けて社会にも発信することで、社会に貢献しようと考えを新たにした次第です。 しかも自分で薬膳チキンブイヨンを作る時間がなかなかない時に愛用していた丸鶏だしの商品には群、化学調味料も酵母エキスのような添加物も塩分も加えていない「丸鶏だしデラックス」という選択肢があることを知りました。 でもこんな風に理屈だけこねていても、実際に自然の味わいと人工的な味わいを見分けられないと話が始まりません。 だからこの機会に今日の薬膳調理レッスンでは、実際に生徒さまと、自家製の薬膳チキンブイヨンと、酵母入り丸鶏だしなどの違いを実際に舌で味わい確認するミニワークショップを実践。 自分でとった自然のスープストックの味はまろやかで大変美味しく、いつまでも舌の上に旨みがまとわりつく人工的な味とは全く違うことを確認して、間もなく出産を予定している生徒さまとびっくりしました。 薬膳の専門家としてこれからさらによく気を付けて、自然派食材を見極める目をより一層高めなくてはと想いを新たにしています。 生徒さまは美味しそうに薬膳チキンブイヨンで作ったお粥を美味しそうに召し上がってくださり、食べながらそれまで眠っていたお腹の赤ちゃんが元気に動き出したと笑顔で教えてくれました。 そして食べること食べること^^

薬膳調理レッスン20220525

これから生まれる命、未来を担う子供たちに、薬膳の専門家を目指すママの生徒さまを通じて、自分は間接的に中医学に基づく食事療法を伝える道を選びました。 だから、中医学理論はもちろん、現代医学や現代栄養学の知識も駆使して薬膳生活を伝えてきたつもりでしたが、食品添加物についてもさらに注意を払って薬膳の神髄を伝えなくては。 こう想いを新たにした次第です。 今回のお話しが酵母エキスの真実に気づいていなかった薬膳の専門家や専門家を目指している方、健康志向の高い皆さんのお役にたてば幸いです。 須崎桂子けいてぃー♪ 参考文献: 須崎桂子著『ナチュラル薬膳生活入門編』 阿部司著『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物『健康志向の人も知らない「無添加だし」の深刻盲点』  よく感じる「もわっとした後味」の正体は? https://toyokeizai.net/articles/-/500232]]>