そもそも現代医学でいう脾臓って何?
脾臓は、医の裏側にあるにぎりこぶしほどの赤い器官です。 赤い組織の赤脾髄と、白い組織の白脾髄から成ります。 赤脾髄は、血流から入ってきた古い赤血球や血小板を処分する働きなどがあります。 白脾髄は、白血球免疫細胞の働きや、増殖などに関与します。中医学でいう脾(ひ)とは一体何か?
一方、中医学でいう脾(ひ)は概念的な「臓」なので、物質的なモノとしては存在していない臓器です。 しかし薬膳学をはじめ、中医学の考え方をベースにセラピーを行う鍼灸・中薬学・気功学・日本漢方・按摩・推拿の世界では、消化吸収を担う概念的な臓器として捉えられています。 しかもカタチはないのに、お腹のあたりにあると考えられているのです。 初めて聞く人にとっては驚きだと思うのですが、これはインド人がゼロという概念を古代から持っていたのに匹敵する驚きの概念だと思います。 「脾はないのにある。」とは一体どういうことなのでしょうか? 一般の皆さんも「五臓六腑」という言葉をお聞きになったことはあると思うのですが、脾はこのうちの「臓」のひとつなのです。 実は中医生理学の分野では、機能の面から近しい働きを持つ臓と腑は表裏関係と言って一対ずつワンセットで考えられているのですね。 臓の脾は腑の胃とコンビになっており、中医学の一分野である薬膳学でもよくこれらを合わせて「脾胃(ひい)」と呼びます。 皆さんご存じのように胃は大体で良いのですが体幹の真ん中あたりにありますよね。 そして胃は消化吸収の最初の段階で、食べたものをよくこなすという働きを担っています。 中医薬膳学の先人たちは、胃とタッグを組んでいる脾は、胃と協力し合って消化吸収そして氣(生体エネルギー)を生む大切な一翼を担っていると考えてきました。 脾にはカタチがないのにです! でも脾は胃と一緒に働くので、お腹の真ん中あたりにあると考えられてきたのです。 ですから中医学の各方面の専門家たちは脾について「消化吸収をになう臓器」や、「消化器系統」と表現しています。 現代医学では脾臓は血液に関与する臓器であることを先にご紹介しましたが、このように中医学の脾は消化器系統の臓器という認識なので生理学においては全く異なる概念なのがお分かりいただけたでしょうか。 薬膳の初心者の皆さんが学んでいる【前期】薬膳基礎コースの中医生理学では、脾をはじめ内臓くん達が一体どのような相関関係を持って働いているのか、ビジュアルで分かるように擬人化して教えています。 しかし、臓腑の絵を可愛く擬人化して描くときに、脾はカタチがない臓器なのでどのようにお絵かきで表現したらよいものかと迷いました。。。 ちなみに、脾は胃がこなしてドロドロにした飲食物を氣に変換するため、氣を作る製造工場が位置している体の上の方に、ぐい~んと持ち上げる働きも担当しています。 中医学では脾には氣の材料だけでなく、驚いたことに内臓も落っこちないように上に引っ張り上げておく働きがあると考えられています。 そこで、自分の中では脾は上昇しながら飛んでいくスーパーマンのようなイメージがあったので、そのように描くことにしました(笑)。 もともとカタチはないけれど、二千年前に中医学の専門書が編纂された昔からずっと、概念としては存在すると考えられて臨床で人々の診察・診断・治療の対象となってきた内臓です。 中医学の先人に敬意を払いつつこのように自由な発想で脾を描かせて頂き、公式テキストやホワイトボードに生徒さまにお示ししながら「ナチュラル薬膳生活Ⓡ」を社会普及しています。まとめ【中医学の臓腑とは】脾(ひ)って何ですか?脾臓(ひぞう)じゃないの?
今回は薬膳レッスンが始まる前に、薬膳は初心者の生徒さま達が中医薬膳学で耳にする脾と現代医学の脾臓が同じでしょ・・・と語り合っているのを耳にしたので、その違いを「脾って何ですか?脾臓じゃないの?」というご質問にお応えするカタチでまとめてみました。 現代医学の脾臓は血液に関与する臓器で、古くなって使わなくなった赤血球を壊す働きなどがあります。 一方、中医学で言う脾は概念的な臓器でカタチはないものの、体の真ん中に位置して胃とともに消化吸収を担う臓器だと考えられています。薬膳は中医学に基づく食事療法なので、健康増進・不調の予防ケアを実際に行うには、中医学の専門知識がある程度必要です。
このことから将来薬膳の専門家を目指す大人女性の皆さんや、すでに薬膳の専門家として活躍しているけれど、中医学の脾と現代医学の脾臓の違いがはっきり分かっていなかった方がいらしたら、今回のブログがお役に立てば幸いです。
須崎桂子けいてぃー♪
参考文献:
須崎桂子著『ナチュラル薬膳生活入門編』
佐藤昭夫、佐伯由香編集『人体の構造と機能』]]>