【薬膳レシピ開発】夏バテ予防にお味噌汁で家庭薬膳でもよいのですか?

【薬膳レシピ開発】夏バテ予防にお味噌汁で家庭薬膳でもよいのですか?

薬膳ライフコーチがレシピ開発中

医療や食やセラピーの現場で、自分や家族の不調に何を食べたらいいのか迷う患者さまやクライアントさまに、やさしい家庭薬膳レシピを提案できる人材を育成して14年になります。 きっかけは、肺がんの放射線の通院治療で体内の呼吸器に火傷を負った父に、実家で炎症を癒す料理を考えられなかった会社員当時の後悔でした。 父が他界した後この苦い経験を糧に薬膳を学び、勤めを辞して2008年に《薬膳の専門家》を養成する薬膳スクールを開校して現在に至ります。 《薬膳の専門家》を育てる【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】 さて、今回は薬膳を自分で考えて作れないと悩んでいる人たちの励みになる話題をお届けしたいと思います。 ナチュラル薬膳生活専門家養成コースには、薬膳レシピ開発レッスンの復習課題が含まれています。 こうした記述式の復習問題は、オンラインのラーニングシステムからワードdocx文書で提出物を受け取ってから、お一人おひとりに薬膳ライフコーチがコメントしてお返しするカタチをとっています。

薬膳レシピ開発課題

万が一パソコン操作が苦手な場合には、手書きで記入した薬膳レシピ開発シートの写真をメールやLINE添付で送って頂いています。 暦の上では秋ですが先日は薬膳ライフコーチから「夏の季節薬膳のレシピ開発例」をまずご紹介して、生徒さまにそれぞれ夏の薬膳レシピを開発してご提出頂いたのですね。 その中で和食のお味噌汁を使って夏バテ予防ケアの家庭薬膳を開発した方がいらっしゃいました。 レッスンではご自身が開発した薬膳レシピを《薬膳の専門家》になったつもりで解説するロールプレイも実施しています。 その際、その生徒さまは「夏の季節薬膳のレシピ開発課題の提出にお味噌汁でもいいのかな。」と少し自信なさげ。

美穂さんの夏の味噌汁薬膳

でも、レシピの組み立て内容を拝見したら、夏バテの予防に役立つ家庭薬膳だったので、大丈夫と励まして差しあげました。 ですから今回のテーマは、「【薬膳レシピ開発】夏バテ予防にお味噌汁で家庭薬膳でもよいのですか?」です。

薬膳レシピ開発は健康増進・病気の予防ケアの目的に合わせて

薬膳は中医学の理論を用いた食事療法です。 そして、薬膳レシピを開発するときには健康増進のため、病気の予防ケアのためといったように目的があります。 例えば中医学の根底には、大宇宙の厳しい天候変化をもたらす大自然を大宇宙と見做し、その影響をもろに受ける人間の体を小宇宙になぞらえて、人の心と体の調子を整える考え方があります。 巡る季節変化による天候の移り変わりは気温や湿度の変化などを引き起こすので、体調を崩す人が少なくありません。 季節の気候変化はどんな人の心と体にも影響を及ぼすので、薬膳の初心者さんはまず季節薬膳から学び始めることがほとんどです。 今回の薬膳レシピ開発の課題の場合も学び始めたばかりの方の【前期】の調理レッスンなので、まだ気候が暑いこともあり、夏を題材にこの季節に起こりやすい不調を想定して食事療法を考えて頂きました。 夏の季節薬膳のお味噌汁を考案した生徒さまが想定したのは、夏の典型的な不調の中から「夏バテ」でした。 ただし、夏バテといってもその原因や症状は様々。 生徒さまによると夏の盛りに冷たいものを摂り過ぎて胃腸が冷えて弱っている人の夏バテを想定したとのこと。 実際に小学生のお子さん達を海水浴に連れて行ったそうなので、海の家で冷たいかき氷などを召し上がったのかもしれません。

氷の昇り

夏のお家ご飯は温かいものが食べたくなったらしいのですね。 そこで、ご飯とおかずの他に、消化器の働きを高めるじゃが芋などを入れた具たくさんの温かいお味噌汁を薬膳レシピ開発の課題提出用に試作。 生徒さまの高齢のお母さまも、小さなご家族もみんな喜んで美味しいと召し上がったそうです。 夏バテは暑さそのもののせいか、冷たいものの食べ過ぎて消化器がへたってしまい、しっかり食物から滋養を体に取り込むことができなくなるので、体がガス欠のような状態に陥ること。 中医学の理論では、胃腸は温かい環境で良く働くと考えられています。 だから胃腸が冷えて栄養を十分に吸収できないと、倦怠感が生じてだるくなるので、体を動かすのがおっくうになったり、食欲がなくなったりしやすいと考えるのですね。 暑い夏の季節ではありますが、そんな理由で胃腸の不調が起こらないように敢えてお夕食に温かいお味噌汁を家庭薬膳として処方した一品。 ということなので、夏バテによる不調の予防と臓腑のケアという目的に合わせていますから、生徒さまのお味噌汁は立派な家庭薬膳なのです。

夏バテ対応の味噌汁薬膳「鶏肉とじゃが芋のお味噌汁」

最初に生徒さまの薬膳レシピ課題を受け取った時には、レシピのネーミングが「夏バテ対応味噌汁」でした。 う~ん。お味噌汁と言っても中に入れる薬膳素材の具材によって、働きは変わります。 かなり具沢山だったのですが、作り方と材料をよく拝見するとメインとなる薬膳素材の具材は、鶏肉とじゃが芋なのが分かりました。 薬膳的に言うと、鶏肉もじゃが芋も気を補給する薬膳素材なので、体にエネルギーを充電するので夏バテ予防にピッタリ。 しかもじゃが芋には消化器系統の働きを高めてくれる「健脾(けんぴ)」という作用もあるのです。

新じゃが芋

だから、ご自身が想定した夏バテを防ぐ薬膳の処方としては相応しいので自信を持ってねとコメントした次第です。 ただし、せっかく処方にピッタリな薬膳素材を入れているので、せめてネーミングを「鶏肉とじゃがいものお味噌汁」といった感じに、何が入っているのか分かるとなおよいですねとお話しました^^ このように薬膳はわたくし達日本人が普段使っている食材を薬膳素材として使うことで十分作れますし、和食のレシピでも薬膳の目的に合っていれば日々の健康管理に役立ちます。 お腹の調子を整えるには生徒さんが選択したお味噌汁という調理法も消化吸収を担う胃にとって大変よい調理法になっています。 お味噌は発酵食品なので、予め大豆たんぱくがアミノ酸に分解されているので消化しやすくなっているし、旨味も出ているからとても美味しいので食欲をそそります。 薬膳的に言うと味噌にはお腹を温める働きもありますので、冷たいものを摂り過ぎやすい夏の胃腸を守る食養生に使うのは理に適っていました。 下記は薬膳素材辞典や現代栄養学の事典からの抜粋です。 温中というのはお腹を温めること。 中医学で「中(ちゅう)」は消化器系統のことを表しています。 現代栄養学的に言えば、もともとお肉よりお豆やお魚からたんぱく質を摂ってきた日本人の体にやさしい良質なたんぱく質がたっぷり含まれているのが嬉しいですね。 サポニンには抗酸化の働きもありますから、お味噌は夏の強い紫外線で活性酸素が体に生じやすい夏の体を癒すのにも大変よい薬膳素材の選択と言えるでしょう。
体温調節系 温裏類 味噌 *体温への作用・味の性質・臓腑への働きかけ・作用* 温 甘鹹 脾 腎 胃 温中 降気 解毒 *栄養素・生理機能成分* たんぱく質 イソフラボン サポニン

参考文献 『ナチュラル薬膳生活入門編』 『食材健康大事典』

まとめ【薬膳レシピ開発】夏バテ予防にお味噌汁で家庭薬膳でもよいのですか?

今回の話題「夏バテ予防にお味噌汁で家庭薬膳でもよいのですか?」は如何だったでしょうか。 こうして薬膳を学んでいる生徒さまはもちろん、薬膳を独学で学んでいる方、薬膳を学んだことのある方、薬膳を教えている方からよく、薬膳レシピ開発が出来ないとご相談を伺うことは少なくありません。 身近な和食スタイルで生徒さまが開発したお味噌汁の薬膳レシピは、目的としていたお腹を冷やさないようにして夏バテを予防するのに役立つ処方になっています。 ですから、夏バテ予防にお味噌汁で家庭薬膳でもよいのですか?に対するお応えは、健康増進や病気の予防やケアに合っていれば、薬膳レシピとして相応しいということでした。 ただし、今回は生徒さまが想定していたのが、夏に冷やしがちな食生活で弱った胃腸を温かいお味噌汁でいたわることだったので、目的に合う処方になっているという点が大切です。 ひと口に夏バテと言っても、症状は様々ですから猛暑で発熱しているような夏バテでしたら、熱々のお味噌汁は熱の症状を悪化させるかもしれないからです。 そんな場合は、お味噌汁の調理法を敢えて冷や汁のように変えて、冷まして頂くのもよいですね。 お味噌汁からは適度な塩分も摂れるので、暑いからと言って冷たいお水をがぶがぶ飲むよりも、適温のお味噌汁を食事の時に頂くのはとてもよいと思います。 というわけで今回は生徒さまが開発した薬膳レシピを例に、普通の日本家庭のお味噌汁でも立派な夏の季節薬膳が作れることをご紹介させて頂きました。 薬膳レシピを自分で考えて作れないという悩みを持つ方の問題解決の一助に今回のお話がお役に立てば幸いです。 須崎桂子けいてぃー♪]]>