医療や食やセラピーの現場で、自分や家族の不調に何を食べたらいいのか迷う患者さまやクライアントさまに、やさしい家庭薬膳レシピを提案できる人材を育成して14年になります。
きっかけは、肺がんの放射線の通院治療で体内の呼吸器に火傷を負った父に、実家で炎症を癒す料理を考えられなかった会社員当時の後悔でした。
父が他界した後この苦い経験を糧に薬膳を学び、勤めを辞して2008年に《薬膳の専門家》を養成する薬膳スクールを開校して現在に至ります。
《薬膳の専門家》を育てる【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】
今月に入り薬剤師さん医薬品に対する意識をリサーチをしていたのですね。
その際に宇田川久美子さんが2013年に書かれた『薬剤師は薬を飲まない あなたの病気が治らない本当の理由』に遭遇。
医薬品が心身に与える影響について現代生理学を知っている医療従事者の方であれば、当たり前にご存じのことが一般の人にも分かるように書かれています。
著者はこの本を通じて安価に大量の薬を手に入れられる日本人が、必要以上に化学合成薬を飲み続けている状況に警鐘を鳴らしています。
わたくしは医療従事者ではありませんが、薬膳講師を目指して中医学を学んだ2005年当時、先人の知恵だけで心・体・魂の不調を予防ケアするのは難しいと感じていました。
このため2008年に薬膳スクールを開校してから自営の仕事を続けながら薬剤師の先生について現代の薬理学や生理学や栄養学の視座でメディカルハーブを修めました。
その知識のおかげで、この本はとても読み解きやすかったです。
例えば今日のテーマに選んだ生体内の酵素や補酵素の働きついては既に学んでいたからです。
とにかくこの本には薬だけに頼らないで健康をバランスよく守りたい薬膳生活に役立つ指針がぎっしり詰まっています。
そこで統合医療の立場から薬がいい悪いの極論に偏らないで、読書会風に《薬膳の専門家》を目指す人たちに大切なポイントを少しずつライブでご紹介し始めています。
統合医療というのは、伝統医学と現代医学のメリットはどちらもバランスよく使って、人々の心と体の健康をホリスティック(総体的)に守ろうと試みる医学的なアプローチのことです。
今日のテーマは、「【薬膳お役立ち情報】薬剤師さんの参考本に学ぶ「薬は体内の酵素を奪う」」。
動画は14:50です。文字情報でお読みになりたい場合は、続きをどうぞお読みくださいね。
では薬を長期的に服用するのに反対する著者の理由が「薬は体内の酵素を奪うから」を理解するために、酵素とは何か、酵素の種類、酵素を含む薬膳素材をご紹介します。
薬を飲み続けるとよくないのは「薬は体内の酵素を奪う」のが理由
副作用など薬を何種類も長く飲み続けるとよくない理由は複数ありますが、ここでは「体内の酵素を奪うから」という明確なひとつの答えを取り上げます。
酵素については誰でもよく耳にする言葉ですが、生理学の知識のない一般の人はその定義を曖昧にしか捉えていないことが多いです。
わたくしも自身もこうした食の健康の仕事に就く以前、一般腎のサラリーマン時代はそうでした。
酵素というのは体の中で、それ自身は変化せず、他の物質の化学反応を起こさせる物質で触媒(しょくばい)の一種です。
例えば、Aという物質に、酵素が関与することで化学反応が起こり、Bという物質に変わるといったことです。
わたくし達の体の中ではさまざまな化学反応が常に起こっていて、そのおかげで命を維持できているのです。
酵素には2つの種類がある「食物酵素」「体内酵素」
但しひと口に酵素と言っても何千種類もありますが、まずは大きく二つの種類に分かれます。
この本では酵素の種類をメカニズムと、薬がその働きに負担をかけてしまうことが分かりやすく説明されていたのでご紹介します。
それら2種類は「食物酵素」と「体内酵素」。
前者の食物酵素を含む薬膳素材を例を挙げると、「大根」が代表的な食材です。
薬膳素材としては、消食類(しょうしょくるい)に分類され消化を促進するので、胃もたれの予防とケアに使われます。
消食は食べ物の消化を促すことです。
今では現代栄養学の見地から、今では大根に含まれている炭水化物の分解を促進するジアスターゼや、たんぱく質を分解するプロテアーゼといった酵素が、消化を助ける働きを発現することが分かっています。
薬膳の理論の礎である中医学では、こうした食物酵素の存在が知られるずっと以前から大根には消化を助ける薬効があると経験則から知っていて、胃腸のトラブルの予防とケアに使ってきたのです。
営養補給系 消食類 大根
*体温への作用・味の性質・臓腑への働きかけ・作用*
涼 甘辛
肺 胃
理気消食 降気寛中 清熱化痰 化瘀止血
*栄養素・生理機能成分*
ジアスターゼ プロテアーゼ |
参考文献『ナチュラル薬膳生活入門編』
体内酵素にはさらに2つの種類「消化酵素」「代謝酵素」がある
一方、薬はわたくし達の体に備わっている後者の「体内酵素」の働きを奪うというのです。
それは一体どういうことでしょうか?
体内酵素にはさらに大きく分けて二種類の「消化酵素」と「代謝酵素」があります。
消化酵素は先に例を挙げた大根と同じこと。
体に入ってきた食べ物を消化して化学反応を起こさせ、エネルギーや体の組織や生命を維持するのに必要な血液などの物質の材料を作ります。
もうひとつの代謝酵素は、
・消化酵素が分解して作ったエネルギーから心臓の拍動など臓腑を機能させる力を生み、
・人体組織の材料から骨や筋肉を作り、
・全身に酸素や栄養を運ぶ血液を作り、
・体を潤す体液を作り、
・不要になった老廃物を便や尿に変える。
などの働きをします。
このように人は生れてからずっと食べ物が生体に入ってくると、体が喜んで命を繋ぐのに必要なモノを作り、要らないモノを排泄するという営みを繰り返して生涯を全うします。
その間に幾千もの体内酵素が複雑な化学反応を起こして体内の物質が作り変えられている限り声明を持続していけます。
しかし年齢を重ねるにつれて体内酵素が作られる量が減ってくるのは自然の摂理。
そして体内酵素が無くなることは命の終焉を意味します。
一日に作られる体内酵素の量には限界があり、消化酵素と代謝酵素はお互いに関与し合う相対関係にあります。
パイはひとつなので、どちらか一方を極端に多く使い過ぎると、他方が使える量が極端に減ってしまいます。
例えば、年末年始で食べ過ぎて消化酵素を使い過ぎてしまうと、細胞組織の修復に使う代謝酵素が不足します。
口腔粘膜が荒れて口内炎が出来たり、皮膚に炎症が起こったりするのも、体内酵素を使うバランスが崩れたことが原因である可能性が高いのです。
薬は「代謝酵素」が解毒するので体内酵素が減ってしまう
こうした微妙なバランスの上に成り立って生命を維持するのに化学反応を起こしながら日夜働いているのが体内酵素です。
体の中に食べ物ではない薬が入ってくると異物なので、生体は薬を取り除くために代謝酵素を使って分解しようとします。
これが解毒です。
解毒を担う代謝酵素は肝臓が作るので、薬を飲むと肝臓に負担がかかります。
体内酵素は使える量に限りがあります。
だから毎日薬を飲み続けると、消化やエネルギー産生や細胞の再生などに必要な酵素が不足します。
このため、消化不良や、疲労感や、肌荒れや、意欲の減退など、心と体に影響が現れやすくなります。
薬を飲み続けてこのような症状が慢性的に現れているのなら、それは副作用の症状かもしれません。
ですからこの本の筆者は、「酵素は体内の酵素を奪う」から、薬を日常的に飲み続けるのは好ましくないと教えてくれているのです。
まとめ【薬膳生活お役立ち情報】薬剤師さんの参考本に学ぶ「薬は体内の酵素を奪う」
今回の話題「薬剤師さんの参考本」に学ぶ「薬は体内の酵素を奪う」は如何でしたか。
酵素という言葉はよく耳にしますが、このように、酵素には体内酵素と食物酵素があるのを意識すると、食物酵素を含む薬膳素材を食べて体内酵素を助ける薬膳を考えやすくなりそうですね。
さらに、体内酵素には消化酵素と代謝酵素があり、体で作れる量に限りがあるのを知ると、必要のない余計な薬を体に入れるのが酵素の無駄遣いになることがよく分かります。
生命の質を守り維持するのに大切な働きを担う体内酵素の働きはバランスよく消化と代謝に振り向けて、薬は目的に合わせて必要なときに適正な量を限られた期間に賢く使う。
わたくし達、一般人はたとえ医療従事者でなくても、やさしく生理学や薬理学を知って、自分の体に入ってくるものが何か自己管理するのがこれからの時代求められてきそうです。
では薬剤師を薬膳の専門家に育てているナチュラル薬膳生活の知恵が、みなさまの健康から生まれる幸せな暮らしのお役に立てば幸いです。
須崎桂子けいてぃー♪
参考文献:
宇田川久美子著
『薬剤師は薬を飲まない~あなたの病気が治らない本当の理由』
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