医療や食やセラピーの現場で、自分や家族の不調に何を食べたらいいのか迷う患者さまやクライアントさまに、やさしい家庭薬膳レシピを提案できる人材を育成して14年になります。
きっかけは、肺がんの放射線の通院治療で体内の呼吸器に火傷を負った父に、実家で炎症を癒す料理を考えられなかった会社員当時の後悔でした。
父が他界した後この苦い経験を糧に薬膳を学び、勤めを辞して2008年に《薬膳の専門家》を養成する薬膳スクールを開校して現在に至ります。
《薬膳の専門家》を育てる【ナチュラル薬膳生活Ⓡ学び舎ブログ】
昨日のブログでは
HbA1c血糖値高めは漢方薬で対応できるか症例研究1で、血府逐瘀湯と田七人参を組み合わせて、糖化ヘモグロビンを取り除く試みをレポート。
まず《薬膳の専門家》である薬膳ライフコーチ自らが症例として、中医学の食事療法である薬膳のレシピ開発を行いながら研究を始めました。
そのシリーズとして今回は、「【薬膳生活お役立ち情報】HbA1c血糖値高め血流改善の漢方と薬膳症例研究2」をしたためます。
Ⅱ型糖尿病の予防ケアに血府逐瘀湯と田七人参の併用は血流改善による浄血が目的
Ⅱ型糖尿病予備軍の予防ケアの薬膳レシピを開発するには、どんなタイプの糖尿病リスクなのか見立てる必要があります。
ひとくちにⅡ型糖尿病といっても中医学理論を使って診察すると、さまざまなタイプがあるからです。
HbA1c血糖値高めは漢方薬で対応できるか症例研究1でレポートしているのは、血流がよくないタイプ。
中医学では「血瘀(けつお)」といわれる状態です。
血瘀のせいで生じた糖化ヘモグロビンのような血(けつ)の病的産物は、「瘀血(おけつ)」といいます。
ひっくり返して読むので少しややこしいですね。
この症例で服用しているのは血府逐瘀湯と田七人参ですが、その目的は血流改善による「浄血」。
漢方薬局から紹介してもらった血府逐瘀湯のエキス剤に含まれている生薬は、
トウキ 当帰
シャクヤク 芍薬
センキュウ 川芎
サイコ 柴胡
ジオウ 地黄
カンゾウ 甘草
トウニン 桃仁
キキョウ 桔梗
コウカ 紅花
ゴシツ 牛膝
キジツ 枳実
血流を良くするだけでなく血を作ったり気の流れを良くしたりする生薬も含まれています。
これらを組み合わせることで、脈管を新鮮な血で満たしながら流れをよくして、糖化ヘモグロビンの瘀血の除去を促進するという戦略なのですね!
ただし、子宮を収縮させる生薬が含まれるので、妊婦さんには禁忌です。
組み合わせている田七人参にも血流を良くする働きがあります。
では、血流を改善して浄血するために漢方薬を服用している人は、どのような薬膳を食べたらよいのでしょう。
Ⅱ型糖尿病の予防ケアに血府逐瘀湯と田七人参を併用している人の薬膳
Ⅱ型糖尿病に限らず血流をよくする必要がある不調を抱えているなら、同じく血の流れを促進する薬膳を食すのが正攻法。
冷えによる血行不良なら、血流をよくするだけでなく、温める薬膳素材と調理法がレシピ開発に向いています。
逆に赤ら顔で発熱しているタイプの血行不良なら、冷やす薬膳素材と調理法を用います。
この症例でレポートしているのは、生まれつき冷え性で血瘀体質の薬膳ライフコーチ。
血流をよくして温める薬膳「焼き鰯とピーマン」を朝食に
ですので、前者を例に朝食で食した血行を促進して温める「焼き鰯とピーマン」の調理例をご紹介します。
フライパンにクッキングシートを敷いて、血流をよくする鰯と気の流れをよくするピーマンを焼いて作ります。
鰯からは血液サラサラに働く不飽和脂肪酸の魚油が含まれているのが嬉しいですね。
その魚油でピーマンも焼けてしまうので、カロリーオーバーを避けるためにも植物油は使わなくて大丈夫。
鰯は気(生体エネルギー)を補給する薬膳素材に分類されています。
さまざまな成分から出来ている薬膳素材の食材は、化学合成薬と違って、ひとつの食材がさまざまな働きを発揮します。
だから、鰯には気を補給する以外にも多様な働きを呈するのですね。
そのひとつが、心(しん)に作用しながら発現する「活血安神(かっけつあんしん)」という作用。
活血というのは中医学で血流をよくすること。
安神は精神を安定させてリラックスさせる意味です。
中医学では心に働きかけて心血(しんけつ)を満たすと精神に鎮静させる作用があると考えられているからです。
ピーマンにはピラジンという芳香成分が含まれていて、食べ物から得られた気を全身に巡らす働きがあり、血栓予防にも役立ちます。
中医学理論では気と血は一緒に流れると考えられてきました。
このため血流を良くしたいなら、気の流れを促進する香りのよい薬膳素材を一緒に料理するのが理に適っているのです。
彩りにトマトを添えましたが、熱冷さましの薬膳素材なのでちょっぴり。
トマトには血をきれいにする「涼血」という働きがあります。
ただし、ここでご紹介した薬膳レシピ開発例は、「生活習慣病」に対して万能というわけには行きません。
とくに高血圧症の方には向かないので補足説明させていただきます。
この鰯はオットが珍しく買ってきた「目刺し」の真いわし。
皆さんご存じの通り日干しの加工食品は塩分が多いです。
須崎家ではオットがスーパーマーケットで食品を買うのが大好きなので、おまかせで時々あれ!?と思う薬膳素材を調達してしまう場合があります。
食してみたらこの目刺しもご多分に漏れず結構しょっぱかったので、生の鰯を使って塩は少々ふる程度にするのがベターです。
薬膳の朝食全体のメニューとしては、焼き鰯とピーマン以外の料理に塩を使わないか減らすことで調整しました。
焼き鰯とピーマン・もちきびと大麦のピーナッツ粥・蒸しキャベツサラダ・梅肉辛子納豆
例えば、蒸しキャベツの温サラダには何も調味料を加えていません。
薬膳素材そのもののキャベツだけでもともと含まれているナトリウムの塩味や自然な甘味を感じて十分おいしかったです。
納豆に入れた練り梅もほんの少し。薬膳粥には塩は入っていません。
なお血流をよくする薬膳素材のお酢類を切らしていたので使いませんでしたが、黒酢やバルサミコ酢を煮詰めてかけると薬膳の目的に対する効果があがります。
まとめ【薬膳生活お役立ち情報】HbA1c血糖値高め血流改善の漢方と薬膳症例研究2
薬膳ライフコーチ自身が糖尿病の予防ケアの薬膳生活を始めたことから、日本漢方と薬膳の食事療法の組み合わせ例を紹介しました。
糖尿病予備軍の症例は、中医学理論で分析するとさまざまです。
ここではHbA1cの血糖値が高めの症例で、血流がよくないため血が汚れている瘀血タイプの血流をよくするのが目的でした。
血流をよくする漢方薬は血府逐瘀湯と田七人参を服用していることを理由を解説。
この処方に合わせて、普段の食生活ではどのような薬膳を心がけたらよいのか調理例として「焼き鰯とピーマン」を紹介しました。
血流をよくする鰯、気の流れをよくするピーマン、血をきれいにするトマトを組み合わせ、全体として血流改善と浄血に働く薬膳処方。
ただし、このレシピでは塩分の多い日干しの鰯を使ってしまったので、本来は生の鰯を使って自分にちょうど良い塩を振って調理する方がよいことを細く説明しました。
薬膳ライフコーチ自身が、血行を良くする糖尿病の予防ケアの食事を心がけている薬膳生活レポートのシリーズ。
薬膳ライフコーチの症例研究をもとにして、生活習慣病の中でもHbA1c高めのための糖尿病予防ケアの薬膳生活の考え方が、同じような健康不安を抱える大人女性の皆さんの参考になれば幸いです。
須崎桂子けいてぃー♪]]>