こんにちは。貴女の潜在的なレシピ開発力をひきだす薬膳ライフコーチ須崎桂子けいてぃーです。
今日は3月3日出版の電子書籍『薬膳生活レシピ開発BOOK Vol.4 春 季節薬膳』に収載する「菜の花と人参の信田煮カニくずあんかけ」の画像データを確認しました。
このようにとろりとしたくずあんをかけた和食薬膳の一品。
仕上げに本葛粉を水で溶いたものをカニ缶の身と漬け汁とともに煮汁に入れて加熱。
そしてとろ~り透き通ったカニくずあんに仕上げました。
するとデータファイルの中にとろみづけに使った「本葛粉を料理しやすくミルにかけて粉砕」した画像が出てきたのですね。
本葛粉は購入して袋を開けると中にはブロック状の塊で入っています。
買ったらミルにかけてこのようにパウダー状にして瓶に移し、冷蔵庫で保存すれば湿気らずに長期保存が利きます。
ところで薬膳ライフコーチは春のこの時期になると、季節薬膳レシピ開発によく「本葛粉」を使います。
リーズナブルな片栗粉に比べると高価なので、普段とろみづけが目的で本葛粉を買う人はあまり多くないかもしれません。
例えば当校でよく薬膳素材を購入している「富澤商店TOMIZ」さんのネットショップで確認したら、今日現在の価格ですが、片栗粉は100gあたり100円ちょっと。本葛粉は788円で販売されています。
本葛粉は片栗粉のおよそ8倍くらい高価な薬膳素材なのです。
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でも薬膳ライフコーチは薬膳的な働きの違いを意識して「片栗粉」と「本葛粉」を敢えて使い分けているのですね。
今回はこれらの違いと使い分けの理由をご紹介します。
原材料からみる「片栗粉」と「本葛粉」の違い
「片栗粉」も「本葛粉」も、どちらもでんぷんですが、決定的に違うのは原材料となる植物です。
片栗粉は商品パッケージの裏側を確認すると、原材料は「馬鈴薯でんぷん」と書かれていることが多いです。馬鈴薯はじゃが芋のことですね。
一方、本葛粉は葛(クズ)と表記されていますちなみに「葛粉」と書かれた商品は本葛粉より安価なことが多く、葛ではない他の植物のでんぷんが配合されていることがあります。
これら2つをそれぞれご紹介すると以下のようになります。
片栗粉と本葛粉とは?
片栗粉
片栗粉の原材料は馬鈴薯でんぷん、つまりじゃが芋です。ナス科ナス属の植物にあたります。
作り方はいたってシンプル。
大きな工場ではつぶしたじゃが芋を水とともに遠心分離器にかけて、でんぷんのみを取り出します。
昔は手作りだったから、ゆっくり水に沈殿したでんぷんを取り出していました。
でも工業製品のように大きな機械を使う作業では、大量生産が可能になったので安く出回っているのです。
本葛粉
本葛粉の原材料の植物は葛100%です。マメ科クズ属の植物の塊根にあたります。
この葛の根っ子から抽出されたでんぷんが本葛粉の材料です。
詳しい工程は末尾の奈良県の販売店の参考文献からご覧になれます。
原材料の採取から生産まで大変手がかかる伝統的な加工食品なのが分かります。
薬膳の見地から片栗粉と本葛粉を使い分ける理由
薬膳の見地から片栗粉のとろみは料理を美味しくしたり、元気にしたり、心を癒したり、呼吸器をケアしたりするのに使います。
一方本葛粉も炭水化物のでんぷんなので気(生体エネルギー)を補給して元気になる働きも期待出来ますが、それだけではありません。熱感をさましたり、のどの渇きを癒したりするのに使います。
片栗粉の原材料のじゃが芋は気を補給する薬膳素材の分類です。
中医薬膳学的に見ると体にエネルギーを補給するほか、消化吸収を担う臓器の働きを助けます。
ですから元気になりたい人や、食べてもなかなか太れなくて元気がない人の食養生にとても役立つのですね。
炒め物やスープなどにとろみをつけて「あんかけ」に仕上げる調理法は、いわゆる中華料理によく見られます。
麻婆豆腐や、溶き卵のかきたまスープなどがそうですね。
例えばこちらは会員さまが開発した「麻婆アスパラガス」(『薬膳生活レシピ開発BOOK Vol.3 冬 季節薬膳』より)。
小さなお子さんが食べられるように豆板醤は入れないで甘口に仕上げ、片栗粉でとろみをつけてあります。
このように料理にとろみがついていると、口に入れた時の食感が柔らかいので、体に効かせるだけでなく、心を癒す働きも期待できるのがいいところ。
やさしい味わいと食感は心をほぐすからです。
但し余談ですが、心をやさしくほぐす目的でとろみのある麻婆豆腐を薬膳としてつくるなら、激辛に仕上げるのは避けて。
なぜなら強いピリ辛味は興奮させる働きが強いので、癒されて寛ぎどころか、興奮やイライラを助長させてしまうからです。
やさしい味付けでとろみのある薬膳レシピは、粘膜を保護するので、乾燥する秋やカゼで肺や気管支を傷めたり、喉が痛い場合のケアにもお勧めです。
一方、本葛粉は葛根湯にも配合されている葛(クズ)が原材料。
片栗粉と同じくでんぷんが主成分。葛の塊根にふくまれるでんぷんを生成した食品です。
葛の塊根は古来、日本でも有名な葛根湯に配合されているのが有名ですね。
生薬の葛根は熱を冷まし、熱病によるのどの渇きを癒し、失われた体液を補給するために配合されています。
しかしわたくし達日本人が料理や和菓子の材料として口にしている本葛粉は有効成分がだいぶなくなるまで精製されているように見えます。
末尾に参考文献として本葛粉の生産工程が示されていますが、だいぶ精製度が高いのが分かります。
ですから、葛根の働きが本葛粉と全く同じとは考えにくいのが現実です。
しかし食品として日本家庭の薬膳作りで手に入れられるのは、純度が高い本葛粉。
ナチュラル薬膳生活では本葛粉が葛根と全く同一ではないことを理解したうえで、まだ本葛粉に多少は含まれているであろう有効成分の働きを期待して使っています。
先にお話ししたとおり葛(葛根)には熱さまし、潤い補給の働きがあると言われています。
中医学の考え方で春は容器が高まるのでのぼせやめまいなど、体の上の方が熱くなって、熱感を伴う不調が現れやすいと言われます。
薬膳ライフコーチも立春を過ぎて花粉が飛び始め温かくなってくると、顔が熱くなってのぼせを感じることが多いのですね。
そんなときには家庭薬膳に本葛粉を取り入れて炒めものや蒸し物の仕上げ、とろみスープなどを作ります。
だから、通常の生活でお料理にふんわりやさしいとろみをつけたいときは片栗粉を使っていますが、熱の症状を予防ケアしたいときには葛根湯を選んでいるのです。
まとめ【薬膳レシピ開発】片栗粉と本葛粉の使い分ける理由
今回は、薬膳レシピのとろみづけによく使われている「片栗粉」と「本葛粉」。これらの違いと使い分けの理由を紹介しました。
片栗粉はじゃが芋でんぷんが原材料で安価に大量生産できるため、料理のとろみづけに手軽な加工食品です。
気を補給する薬膳素材のじゃが芋から作られているので、生体エネルギーをチャージして元気になるのに役立ちます。
一方本葛粉は葛の根つまり「葛根」から摂られたでんぷんが原材料。生産に大変手間がかかるので、高級食材のひとつです。
料理のとろみづけに使うと、上品な食感と美しい透明感が得られます。生薬の真っ黒な葛根と原料は同じですが、本葛粉に製品化されたものは精製度が高いので、生薬と全く同じ薬効を持つとは考えにくいです。
しかし、薬膳素材としてはある程度の効果を期待して、体の表面を冷まして、体液を潤す作用が期待されて使われています。
ですから、本葛粉はのぼせて顔や頭に熱感を生じやすい春。または熱病のケアに、熱感を緩やかに降ろす目的で季節や急性病の薬膳作りに使われることが多いのエス。
薬膳は中医学に基づく食事療法です。このようにナチュラル薬膳生活ではさらに現代の生理学や栄養学の知見も組み合わせて、心と体の健康管理に役立てる暮らし方。自分も人も薬膳で幸せにしたい大人女性の皆さまの参考になれば幸いです。
参考文献:
須崎桂子著『ナチュラル薬膳生活入門編』
※3.工場のでんぷん作りは?原理は手作りと同じ 国土交通省
※葛粉ができるまで 吉野本葛 井上天極堂