ナチュラル薬膳生活専門家養成コースには、【前期】薬膳基礎コースと【後期】薬膳応用コースが含まれています。
このうち、薬膳基礎コースにて好奇心いっぱいの生徒さんからいただいた「柿」についてのご質問に対する回答を、分かち合わせていただきます。
今日の薬膳の理論レッスンでは、薬膳素材でもあるフローラル系のハーブを薬膳理論のブレンディングテクニックで淹れて、生徒さん達をお迎えしました。
すると、「このお茶は何?」
薬膳を学び始めたばかりの生徒さん達は興味津々。
お出ししたのはゲラニオールという芳香成分が特徴のローズバッズと、苦味やヘスペリジンという植物化学成分を含むオレンジピールのハーブ薬膳茶です。
今日はこのお茶を飲みながら、薬膳素材の組み合わせにおける注意点「配伍七情(はいごしちじょう)」についてレクチャーをしていたのですね。
その一例、タンニンを含む柿と、同じくタンニンの多い緑茶の組み合わせによる「体への影響」をご紹介していたら、生徒さんのおひとりから次のように聞かれたのです。
「じゃあ・・・柿を食べるときに飲み物を合わせるなら、どんなお茶を飲んだらいいですか?」
柿を食べながら緑茶を飲むと何が起こりやすいか?
なぜ柿を食べるときに何を飲んだらよいのか聞かれた理由。
それは、配伍七情で避けた方がよいという禁忌の一例として、緑茶との組み合わせが薬膳的にいうと実はあまり好ましくないことをお話ししたからです。
配伍七情は中医学の歴代の医家のひとり、明代の李時珍が遺した中薬の配合に関する注意事項が由来。
その注意事項の中に、「相反(そうはん)」両は合相せざるなり・・・という組み合わせがあります。
つまり、相反はあるふたつの中薬を一緒に使うと、何らかの健康被害が起こるかもしれないという意味です。
薬膳理論ではこの李時珍の中薬の組み合わせに関する注意事項を、薬膳素材と置き換えて気を付ける場合があります。
その例としてさまざまな薬膳素材の中から、止咳平喘類の「柿」と、清熱類の「緑茶」の組み合わせは、「相反」にあたるとして取り上げられているのです。
(余談ですが、日本薬局方でチャ(茶)は漢方薬に配合されている生薬と重複します。)
柿と緑茶の組み合わせの禁忌については、自分自身が初めて中医師の先生から学んだときに、とても印象に残ったのを覚えています。
柿は秋から冬にかけて日本のお茶の間にしょっちゅう登場する果物。
日本の家庭で日本茶(緑茶)を飲みながら、柿を食べるのは別に珍しくない光景だからです。
「相反で健康被害」と聞くと心配になりますが、でも起こりやすいとされる症状は、すぐイノチに関わる不調ではありません。
柿と緑茶で起こりやすい不調は「便秘」です。
薬膳の教えは、そのほとんどが先人の長い歴史を通じた経験則。
渋味のある食べ物を摂り過ぎるとお通じに影響が出ることを、彼らは経験的に知っていたのでしょう。
今では科学的な視点から柿と緑茶の組み合わせが、確かにお通じに影響しやすいことが分かってい。
なぜならどちらにも先に話が出た渋味の「タンニン」という植物化学成分が多いからです。
渋味には、たんぱく質を固めたり、ぎゅっと漏れを収斂(しゅうれん・引き締める)働きがあります。
だから腸管の蠕動運動を邪魔してしまう可能性があるのです。
こんな渋味を持つ薬膳素材を一度に両方とったら、お詰まりになるリスクが高まってしまいますよね。
では、「柿」に合わせるお茶は「何」がいいの?
たいていは、このようにご説明をすると、なるほど。
では、「柿を食べるときは緑茶は飲まないようにしよう。」で終わります。
ところが今回は生徒さんから、緑茶で便秘になるなら、柿を食べるときはどんな「お茶」がいいのですか?と重ねてご質問がありました。
そういえばこれまで「相反」の話の際に、柿のおともに緑茶の代わりになる薬膳茶の提案してきませんでした。
だから、生徒さんからのご質問は「Good Question」です。
タンニンによる便秘のリスクを考えたら、柿と飲み物を組み合わせるには、タンニンが少ない「お茶」が好ましいということになります。
しかしお茶というこの言葉は曲者ですよね。
お茶はその漢字表記からしても分かるとおり、狭義ならタンニンを含む「チャの木」の葉っぱを加工した茶剤(緑茶・半発酵茶・発酵茶)に熱湯を注いで、漉して供する嗜好品の飲み物のこと。
それに一般的なお茶という言葉を広義で受けとめれば、「カフェでお茶して帰ろうか~?」と言っうように、慣用的には「コーヒー・紅茶・ハーブティー・ジュース・ソーダ・シェイク」などお店で出される飲み物の総称ということになります。
質問してくださった生徒さんにこの点を確認しましたら、茶葉に限らずやはり広義の「お茶」の意味でおっしゃっていました。
すると柿と「黒豆茶」はどうですか?と聞かれたのですね。
豆類のお茶は、よい発想ですよね。
でも考えてみたら黒豆の植物色素成分の黒い色は渋味や苦みのあるポリフェノール。
実はタンニンはポリフェノールの一種で、多くの植物に含まれています。
でも黒豆茶は緑茶ほどタンニンが多くないので、緑茶独特の苦味や渋味はほとんどありません。
ですから黒豆茶のようなお茶であれば、柿と一緒に飲んでも相反で便秘を起こすリスクはそれほど高くないと思います。
タンニンが少ないハーブティーを柿と一緒に頂くなら、ジャーマンカモミールのミルクティーもよいかもしれません。
ジャーマンカモミールは青りんごのような香りが独特なので、好みが分かれるところですが、意外に温かい牛乳と合わせると美味しいものです。
ジャーマンカモミールや牛乳は、胃粘膜をタンニンから保護するのにも役立ちそうです。
実は先日、めったに行かないスターバックスにたまたま立ちよって、ジャーマンカモミールのミルクティーをいただきました。
スターバックスのコーヒーは自分の体質にはカフェインが多すぎるらしく、飲むと震えを感じることがあります。
だからお店のオーダーのカウンターではすぐに、TEAのメニューボードに目を走らせました。
するとそこに珍しいジャーマンカモミールのラテがありました。
それは、ジャーマンカモミールティーを温かいフォームミルクで抽出したお茶です。
そこで試しにオーダーしていただきましたが、とても美味しかったです。
スターバックスが、ジャーマンカモミールのようなハーブもアレンジティーにして、ヘルシーに楽しめるカフェに変容していたことに驚きました。
ティーラテのセレクションには、茶葉から作られたほうじ茶、アールグレイ、イングリッシュブレックファストがありました。
そこにもうひとつハーブのジャーマンカモミールが含まれていて全部で4種類。
いざ外出先で「お茶」したいときに、コーヒー専門店のカフェでコーヒー飲み物以外も選べるのは助かりますね。
ボードのメニューは、スターバックスの店員さんにご了解をとって撮影させていただきました。
このようにお茶とひとくちに言っても、緑茶ベースでないドリンクはいろいろあります。
ですから柿を食べるときに組み合わせる飲み物は、豆類、花類、穀類、果物類、スパイス類など、様々な茶剤の中から、タンニンの少ないものを選んで組み合わせるとよいでしょう。
まとめ「柿」に合うお茶は?【前期】薬膳基礎コースでのご質問への回答
タンニンの多い柿と緑茶を組み合わせると、中医薬膳学でいう「相反」という影響で便秘になりやすいことをお話しした際、「柿に合うお茶は?」と生徒さんに聞かれたときの答えをご紹介しました。
生徒さんは緑茶でないなら黒豆茶と柿を合わせてみたらどうだろうか等、ご自身でいろいろな選択肢を考えてみてくださいました。
おかげさまでクラスメイトさん達も交えて、タンニンの多い薬膳素材について楽しくディスカッションする機会になりました。
その流れで、薬膳ライフコーチはカフェで最近飲んだばかりの「ジャーマンカモミールのミルクティー」のことを思い出しました。
そこで、黒豆茶もジャーマンカモミールも、緑茶に比べればタンニンが少ないことから、こうしたハーブティーも柿に合わせやすいお茶として例に挙げた次第です。
植物が由来のお茶にはタンニンだけでなく、芳香やビタミンやミネラルなど、いろいろな成分が含まれています。
熱湯で植物に含まれる水溶性の成分を抽出するお茶は、人の体質によって好みや合う合わないが、結構すぐに出るものです。
ですからご自身で飲んでみて心と体が喜ぶかどうかで判断して、柿とのマリアージュにふさわしいお茶を選ぶとよいでしょう。
スギナ、エルダーフラワー、ハイビスカス、レモン、びわの葉など、タンニンがあまり含まれないか少なめのおいしいお茶はいろいろあります。
自分好みのお茶が見つかったら、柿と組み合わせてみて便秘のような困った体調に変化が出ないかどうか、確認するのも一考です。
薬膳レシピ開発力は料理でもお茶でも、食事療法の目的に応じて自分で試しているうちにどんどん磨かれていくことでしょう。
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