薬膳レシピ開発は健康増進・病気の予防ケアの目的に合わせて
薬膳は中医学の理論を用いた食事療法です。 そして、薬膳レシピを開発するときには健康増進のため、病気の予防ケアのためといったように目的があります。 例えば中医学の根底には、大宇宙の厳しい天候変化をもたらす大自然を大宇宙と見做し、その影響をもろに受ける人間の体を小宇宙になぞらえて、人の心と体の調子を整える考え方があります。 巡る季節変化による天候の移り変わりは気温や湿度の変化などを引き起こすので、体調を崩す人が少なくありません。 季節の気候変化はどんな人の心と体にも影響を及ぼすので、薬膳の初心者さんはまず季節薬膳から学び始めることがほとんどです。 今回の薬膳レシピ開発の課題の場合も学び始めたばかりの方の【前期】の調理レッスンなので、まだ気候が暑いこともあり、夏を題材にこの季節に起こりやすい不調を想定して食事療法を考えて頂きました。 夏の季節薬膳のお味噌汁を考案した生徒さまが想定したのは、夏の典型的な不調の中から「夏バテ」でした。 ただし、夏バテといってもその原因や症状は様々。 生徒さまによると夏の盛りに冷たいものを摂り過ぎて胃腸が冷えて弱っている人の夏バテを想定したとのこと。 実際に小学生のお子さん達を海水浴に連れて行ったそうなので、海の家で冷たいかき氷などを召し上がったのかもしれません。 夏のお家ご飯は温かいものが食べたくなったらしいのですね。 そこで、ご飯とおかずの他に、消化器の働きを高めるじゃが芋などを入れた具たくさんの温かいお味噌汁を薬膳レシピ開発の課題提出用に試作。 生徒さまの高齢のお母さまも、小さなご家族もみんな喜んで美味しいと召し上がったそうです。 夏バテは暑さそのもののせいか、冷たいものの食べ過ぎて消化器がへたってしまい、しっかり食物から滋養を体に取り込むことができなくなるので、体がガス欠のような状態に陥ること。 中医学の理論では、胃腸は温かい環境で良く働くと考えられています。 だから胃腸が冷えて栄養を十分に吸収できないと、倦怠感が生じてだるくなるので、体を動かすのがおっくうになったり、食欲がなくなったりしやすいと考えるのですね。 暑い夏の季節ではありますが、そんな理由で胃腸の不調が起こらないように敢えてお夕食に温かいお味噌汁を家庭薬膳として処方した一品。 ということなので、夏バテによる不調の予防と臓腑のケアという目的に合わせていますから、生徒さまのお味噌汁は立派な家庭薬膳なのです。夏バテ対応の味噌汁薬膳「鶏肉とじゃが芋のお味噌汁」
最初に生徒さまの薬膳レシピ課題を受け取った時には、レシピのネーミングが「夏バテ対応味噌汁」でした。 う~ん。お味噌汁と言っても中に入れる薬膳素材の具材によって、働きは変わります。 かなり具沢山だったのですが、作り方と材料をよく拝見するとメインとなる薬膳素材の具材は、鶏肉とじゃが芋なのが分かりました。 薬膳的に言うと、鶏肉もじゃが芋も気を補給する薬膳素材なので、体にエネルギーを充電するので夏バテ予防にピッタリ。 しかもじゃが芋には消化器系統の働きを高めてくれる「健脾(けんぴ)」という作用もあるのです。 だから、ご自身が想定した夏バテを防ぐ薬膳の処方としては相応しいので自信を持ってねとコメントした次第です。 ただし、せっかく処方にピッタリな薬膳素材を入れているので、せめてネーミングを「鶏肉とじゃがいものお味噌汁」といった感じに、何が入っているのか分かるとなおよいですねとお話しました^^ このように薬膳はわたくし達日本人が普段使っている食材を薬膳素材として使うことで十分作れますし、和食のレシピでも薬膳の目的に合っていれば日々の健康管理に役立ちます。 お腹の調子を整えるには生徒さんが選択したお味噌汁という調理法も消化吸収を担う胃にとって大変よい調理法になっています。 お味噌は発酵食品なので、予め大豆たんぱくがアミノ酸に分解されているので消化しやすくなっているし、旨味も出ているからとても美味しいので食欲をそそります。 薬膳的に言うと味噌にはお腹を温める働きもありますので、冷たいものを摂り過ぎやすい夏の胃腸を守る食養生に使うのは理に適っていました。 下記は薬膳素材辞典や現代栄養学の事典からの抜粋です。 温中というのはお腹を温めること。 中医学で「中(ちゅう)」は消化器系統のことを表しています。 現代栄養学的に言えば、もともとお肉よりお豆やお魚からたんぱく質を摂ってきた日本人の体にやさしい良質なたんぱく質がたっぷり含まれているのが嬉しいですね。 サポニンには抗酸化の働きもありますから、お味噌は夏の強い紫外線で活性酸素が体に生じやすい夏の体を癒すのにも大変よい薬膳素材の選択と言えるでしょう。体温調節系 温裏類 味噌 *体温への作用・味の性質・臓腑への働きかけ・作用* 温 甘鹹 脾 腎 胃 温中 降気 解毒 *栄養素・生理機能成分* たんぱく質 イソフラボン サポニン |
参考文献 『ナチュラル薬膳生活入門編』 『食材健康大事典』